島崎藤村(明治5年 – 昭和18年)による短編
「上総の海、到頭この海岸の漁村へ来た。私は長い間の海に対する渇を医することが出来た。富津行の荷物、其他上総通ひの客を載せて横浜を出発した帆船は実に快く走った。十二分に風を含んだ帆はすこし船体を斜めにして、まるで青い波の上を滑つて来たやうなものだ。船の中で、船頭の煮いて呉れた飯も甘かった。富津へ着いてから斯の漁村へ来るまでの海岸も、私の好きな道だ。私は波打際の細い砂をサクサクと踏んで、保養の為にこゝに居るS君に逢ふのを楽しみにして来た。」ーー
著者:島崎藤村
朗読:長尾奈奈
制作:声の書店
協力:株式会社 仕事
再生時間:ー
販売開始日:2024/9
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著者について
島崎藤村
明治5年(1872) – 昭和18年(1943)
筑摩県馬籠村(現、岐阜県中津川市馬籠)生まれ。本名、春樹。