夏目漱石(慶応3年 – 大正5年)による短編小説
「広い土間の真中に涼み台のようなものを据えて、その周囲に小さい床几が並べてある。台は黒光りに光っている。片隅には四角な膳を前に置いて爺さんが一人で酒を飲んでいる。肴は煮しめらしい。爺さんは酒の加減でなかなか赤くなっている。その上顔中つやつやして皺と云うほどのものはどこにも見当らない。ただ白い髯をありたけ生やしているから年寄と云う事だけはわかる。自分は子供ながら、この爺さんの年はいくつなんだろうと思った。ところへ裏の筧から手桶に水を汲んで来た神さんが、」ーー
著者:夏目漱石
朗読:長尾奈奈
制作:声の書店
協力:株式会社 仕事
再生時間:
販売開始日:2025/
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著者について
慶応3年(1867)- 大正5年(1916)
江戸牛込馬場下(現、東京都新宿区喜久井町)生まれ。本名、金之助。帝国大学英文科卒業後、松山中学、第五高校で英語教師を経て、英国に留学。帰国後、東大講師となる。明治38年(1905)、『吾輩は猫である』で文壇に登場。『坊つちやん』『草枕』『三四郎』『それから』『門』『彼岸過迄』『行人』『こゝろ』『道草』『明暗』等、多くの傑作を執筆。近代日本を代表する文学者。