
宮沢賢治(明治29年- 昭和8年)による短編小説
「よだかは、実にみにくい鳥です。顔は、ところどころ、味噌をつけたようにまだらで、くちばしは、ひらたくて、耳までさけています。足は、まるでよぼよぼで、一間とも歩けません。ほかの鳥は、もう、よだかの顔を見ただけでも、いやになってしまうという工合でした。たとえば、ひばりも、あまり美しい鳥ではありませんが、よだかよりは、ずっと上だと思っていましたので、夕方など、よだかにあうと、さもさもいやそうに、しんねりと目をつぶりながら、首をそっ方へ向けるのでした。もっとちいさなおしゃべりの鳥などは、いつでもよだかのまっこうから悪口をしました。「ヘン。又出て来たね。まあ、あのざまをごらん。ほんとうに、鳥の仲間のつらよごしだよ。」「ね、まあ、あのくちのおおきいことさ。きっと、かえるの親類か何かなんだよ。」」ーー
著者:宮沢賢治
朗読:長尾奈奈
制作:声の書店
協力:株式会社 仕事
再生時間:00:18:44
販売開始日:2025/9/2
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著者について
明治29年(1896) – 昭和8年(1933)
岩手県花巻生まれ。盛岡高等農林学校在学中より、同人誌へ短歌や散文の習作をはじめる。大正10(1921)年に上京。筆耕の仕事をしながら童話を執筆。同年、妹の病の報を受け帰郷する。農学校の教諭を務めながら数々の作品を執筆し、大正13(1924)年、詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を出版。農学校を退職後、羅須地人協会を設立。農業や芸術の地域活動に献身する。生前は無名に近いまま、病のため37歳で永眠。没後『銀河鉄道の夜』『風の又三郎』『ポラーノの広場』『よだかの星』『雨ニモマケズ』等、多数の作品が刊行された。