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桜の樹の下には(42)

桜の樹の下には

【日本近代文学名作選㊷】

梶井基次郎

朗読 長尾奈奈

配信サイト

梶井基次郎(明治34年- 昭和7年)による短編小説

「桜の樹の下には屍体が埋まっている!これは信じていいことなんだよ。何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じていいことだ。どうして俺が毎晩家へ帰って来る道で、俺の部屋の数ある道具のうちの、選よりに選ってちっぽけな薄っぺらいもの、安全剃刀の刃なんぞが、千里眼のように思い浮かんで来るのか――おまえはそれがわからないと言ったが――そして俺にもやはりそれがわからないのだが」ーー

著者:梶井基次郎
朗読:長尾奈奈
制作:声の書店
協力:株式会社 仕事
再生時間:07:15
販売開始日:2025/10/9

*聴き方、販売価格、購入方法、決済方法などは、各配信サイトにてご確認ください。

著者について

梶井基次郎

明治34年(1901) – 昭和7年(1932)

大阪生まれ。東大英文科中退。同人雑誌『青空』を創刊し、『檸檬』『城のある町にて』『ある心の風景』などを発表する。翌年、療養のため伊豆の湯ヶ島を訪れ、『冬の日』『冬の蠅』を創作。病状悪化により大阪へ帰郷し、昭和6年(1931)に雑誌『作品』へ『交尾』、翌年『中央公論』へ『のんきな患者』を発表する。文壇から評価され始めた矢先、31歳の若さで亡くなったが、『カインの末裔』『櫻の樹の下には』など、繊細な感受性と詩的な表現を抒情的に織り合わせ、独自の作風を築いた。