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初恋(23)

初恋

【日本近代文学名作選㉓】

国木田独歩

朗読 長尾奈奈

配信サイト

国木田独歩(明治4年 – 明治41年)による短編小説
「僕の十四の時であった。僕の村に大沢先生という老人が住んでいたと仮定したまえ。イヤサ事実だが試みにそう仮定せよということサ。この老人の頑固さ加減は立派な漢学者でありながらたれ一人相手にする者がないのでわかる。地下の百姓を見てもすぐと理屈でやり込めるところから敬して遠ざけられ、狭い田の畔でこの先生に出あう者はまず一丁前から避けてそのお通りを待っているという次第、先生ますます得意になり眼中人なく大手を振って村内を横行していた。その家は僕の家から三丁とは離れない山の麓にあって、四間ばかしの小さな建築ながらよほど風流にできていて庭には樹木多く、草花なども種々植えていたようであった。そのころ四十ばかりになる下男と十二歳になる孫娘と、たった三人、よそ目にはサもさびしそうにまた陰気らしゅう住んでいたが、実際はそうでなかったかもしれない。」ーー

著者:国木田独歩
朗読:長尾奈奈
制作:声の書店
協力:株式会社 仕事
再生時間:00:08:32
販売開始日:2024/12/27
初出:明治33年(1900)「太平洋」10月

*聴き方、販売価格、購入方法、決済方法などは、各配信サイトにてご確認ください。

著者について

国木田独歩

明治4年(1871) – 明治41年(1908)

千葉県銚子生まれ。山口県、広島県育ち。 本名、哲夫。幼名、亀吉。 東京専門学校(現、早稲田大学)中退。在学中に植村正久から受洗。明治27(1894)年『国民新聞』に入社。同年、日清戦争に記者として従軍し、書簡文体で記した『愛弟通信』を発表。明治30(1897)年、田山花袋、柳田国男らとの合著『抒情詩』で『独歩吟』として詩が収録される。明治34(1901)年、初の作品集『武蔵野』を刊行。その後『牛肉と馬鈴薯』『春の鳥』を発表。自然主義文学の先駆となる。『忘れえぬ人々』『酒中日記』『運命論者』『春の鳥』『竹の木戸』など。