箱の中のあなた(9)

箱の中のあなた

【日本近代文学名作選⑨】

山川方夫

朗読 長尾奈奈

配信サイト

山川方夫(昭和5年 – 昭和40年)による短編小説『箱の中のあなた』
「あの、失礼ですが」なめらかな都会ふうの男の声がいった。彼女は、臆病と疑惑とがいっしょになったようなぎごちない様子で、立ち止った。丘の上は、すばらしい夕焼けで赤く染っていた。馬の背のような地面に、まばらな木が細長い影をつくっていた。「いい景色ですねえ、ほんとに。……これ、なんの木です?」なれなれしく、この地方だけに生えている緑いろの炎のような形の樹をさして、男は訊く。――

著者:山川方夫
朗読:長尾奈奈
制作:声の書店
協力:株式会社 仕事
再生時間:00:15:17
販売開始日:2024/3/1
初出:昭和36年(1961)「ヒッチコック・マガジン」第3巻第2号 

*聴き方、販売価格、購入方法、決済方法などは、各配信サイトにてご確認ください。

著者について

山川方夫

昭和5年(1930) – 昭和40年(1965)

東京生まれ。本名、嘉巳。慶應義塾大学大学院中退。第3次『三田文学』を田久保英夫、桂芳久と共に復刊。同誌に『日々の死』を連載。昭和33(1958)年『演技の果て』『その一年』『帰任』『海の告発』を「文學界」に、発表。ショート・ショートの分野でも活躍。『お守り』は海外の雑誌に紹介された。『海岸公園』『クリスマスの贈物』 等により嘱望されたが、昭和40年、輪禍に遭い急逝。没後『愛のごとく』などが出版された。