待つ(1)

待つ

【日本近代文学名作選①】

太宰治

朗読 長尾奈奈

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太宰治(明治42年 – 昭和23年)による短編小説
「省線のその小さい駅に、私は毎日、人をお迎えにまいります。誰とも、わからぬ人を迎えに。市場で買い物をして、その帰りには、かならず駅に立ち寄って駅の冷いベンチに腰をおろし、買い物籠を膝に乗せ、ぼんやり改札口を見ているのです。上り下りの電車がホームに到着するごとに、たくさんの人が電車の戸口から吐き出され、どやどや改札口にやって来て、一様に怒っているような顔をして、パスを出したり、切符を手渡したり、それから、そそくさと脇目も振らず歩いて、私の坐っているベンチの前を通り駅前の広場に出て、そうして思い思いの方向に散って行く。私は、ぼんやり坐っています。誰か、ひとり、笑って私に声を掛ける。おお、こわい。ああ、困る。胸が、どきどきする。」――

著者:太宰治
朗読:長尾奈奈
制作:声の書店
協力:株式会社 仕事
再生時間:00:07:58
販売開始日:2021/3/2 

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著者について

太宰治

明治42年 (1909) – 昭和23年 (1948)

青森県北津軽郡生まれ。本名、津島修治。中学時代から同人誌へ習作を発表。昭和10(1935)年『逆行』が第1回芥川賞候補となる。翌年、第一創作集『晩年』を刊行。以後、『富嶽百景』『津軽』『ヴィヨンの妻』『人間失格』等多くの作品を執筆。