夏目漱石(慶応3年 – 大正5年)による短編小説
「こんな夢を見た。腕組をして枕元に坐っていると、仰向に寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。女は長い髪を枕に敷いて、輪郭の柔らかな瓜実顔をその中に横たえている。真白な頬の底に温かい血の色がほどよく差して、唇の色は無論赤い。とうてい死にそうには見えない。しかし女は静かな声で、もう死にますと判然云った。自分も確にこれは死ぬなと思った。そこで、そうかね、もう死ぬのかね、と上から覗き込むようにして聞いて見た。死にますとも、と云いながら、女はぱっちりと眼を開けた。」ーー
※本商品には第一夜〜第十夜の内容がすべて含まれています。単品版をお求めの方は重複購入にご注意ください。
著者:夏目漱石
朗読:長尾奈奈
制作:声の書店
協力:株式会社 仕事
再生時間:
販売開始日:2025/
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著者について
慶応3年(1867)- 大正5年(1916)
江戸牛込馬場下(現、東京都新宿区喜久井町)生まれ。本名、金之助。帝国大学英文科卒業後、松山中学、第五高校で英語教師を経て、英国に留学。帰国後、東大講師となる。明治38年(1905)、『吾輩は猫である』で文壇に登場。『坊つちやん』『草枕』『三四郎』『それから』『門』『彼岸過迄』『行人』『こゝろ』『道草』『明暗』等、多くの傑作を執筆。近代日本を代表する文学者。