樋口一葉(明治5年- 明治29年)による短編小説
「夕暮の店先に郵便脚夫が投込んで行きし女文字の書状一通、炬燵の間の洋燈のかげに讀んで、くる/\と帶の間へ卷收むれば起居に心の配られて物案じなる事一通りならず、おのづと色に見えて、結構人の旦那どの、何うぞしたかとお問ひのかゝるに、いえ、格別の事でも御座りますまいけれど、仲町の姉が何やら心配の事が有るほどに、此方から行けば宜いのなれど、やかましやの良人が暇といふては毛筋ほども明けさせて呉れぬ五月蠅さ、夜分なりと歸りは此方から送らせうほどにお良人に願ふて鳥渡來きて呉れられまいか、」ーー
著者:樋口一葉
朗読:長尾奈奈
制作:声の書店
協力:株式会社 仕事
再生時間:10:01
販売開始日:2025/10/9
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著者について
明治5年(1872) – 明治29年(1896)
東京生まれ。本名は奈津。明治19年(1886)、中島歌子の歌塾「萩の舎(はぎのや)」に入門。父の死後は家計を支えるため、明治24年(1891)に半井桃水に師事して小説家を志す。翌年に『うもれ木』を発表。以降、『大つごもり』『にごりえ』『十三夜』『たけくらべ』『わかれ道』などの名作を次々と世に送り出した。24歳の若さで亡くなったが、『一葉日記』も刊行され、文学的功績は今日まで高く評価され続けている。