
小泉八雲(嘉永3年- 明治37年)による短編小説
「東京の、赤坂への道に紀国坂という坂道がある――これは紀伊の国の坂という意である。何故それが紀伊の国の坂と呼ばれているのか、それは私の知らない事である。この坂の一方の側には昔からの深い極わめて広い濠があって、それに添って高い緑の堤が高く立ち、その上が庭地になっている、――道の他の側には皇居の長い宏大な塀が長くつづいている。街灯、人力車の時代以前にあっては、その辺は夜暗くなると非常に寂しかった。ためにおそく通る徒歩者は、日没後に、ひとりでこの紀国坂を登るよりは、むしろ幾哩も𢌞り道をしたものである。」ーー
著者:小泉八雲
朗読:長尾奈奈
制作:声の書店
協力:株式会社 仕事
再生時間:
販売開始日:2025/
*聴き方、販売価格、購入方法、決済方法などは、各配信サイトにてご確認ください。
著者について
寛永3年(1850) – 明治37年(1904)
ギリシャ西部レフカダ島生まれ。出生名、パトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)。イギリス、フランスで教育を受け、アメリカで新聞記者などを経て、明治23年(1890)に来日し、島根県松江中学に赴任、同年に小泉セツと結婚する。熊本五高、東京帝国大学、早稲田大学で教壇に立つ傍ら、日本各地の民話や怪談、伝承を英語で紹介し、西洋に日本文化を広めた。『怪談』『知られぬ日本の面影』『骨董』など。