小林多喜二(明治36年- 昭和8年)による短編小説
「先生。私は今日から休ませてもらいます。みんながイジめるし、馬鹿にするし、じゅ業料もおさめられないし、それに前から出すことにしてあった戦争のお金も出せないからです。先生も知っているように、私は誰よりもウンと勉強して偉くなりたいと思っていましたが、吉本さんや平賀さんまで、戦争のお金も出さないようなものはモウ友だちにはしてやらないと云うんです。――吉本さんや平賀さんまで遊んでくれなかったら、学校はじごくみたいなものです。先生。私はどんなに戦争のお金を出したいと思ってるか分りません。」ーー
著者:小林多喜二
朗読:長尾奈奈
制作:声の書店
協力:株式会社 仕事
再生時間:04:54
販売開始日:2025/10/9
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著者について
明治36年(1903) – 昭和8年(1933)
秋田県生まれ。小樽高商を卒業後、北海道拓殖銀行に勤務。在学中から創作に親しみ、ゴーリキーや葉山嘉樹の影響を受け、志賀直哉に傾倒してプロレタリア文学へと進む。昭和3年(1928)、全日本無産者芸術連盟(ナップ)の機関誌『戦旗』に『一九二八年三月十五日』を発表し、翌年の『蟹工船』によってプロレタリア作家としての地位を確立した。その後、『不在地主』『工場細胞』を執筆し、日本プロレタリア作家同盟役員、日本共産党員として活動する。昭和8年(1933)、特高警察に逮捕され、29歳の若さで拷問により虐殺される。貧困や階級社会の現実を鋭い筆致で描き、人間の尊厳を問いかける作品として今日まで読み継がれている。