佐藤春夫(明治25年- 昭和39年)による短編小説
「――あの人があんなふうにして不意に死んだのでなかったら、仮にまあ長い患のあとででもなくなったのであったら、きっと、あなたと私とのことを、たとえばいいとか決していけないとか、何かしらともかくもはっきりと言い置いたろう……わたしはどうもそんな気がするのです。でも、あなたがあれから七年も経つのにどうして今日までひとりでいらっしゃるか、またわたしがどうして時々お説教を聴きに出かけたりするような気持になったか、そのわけをあの人は、口に出しては言わなかったけれどちゃんと知ってはいたのですものね。」ーー
著者:佐藤春夫
朗読:長尾奈奈
制作:声の書店
協力:株式会社 仕事
再生時間:06:48
販売開始日:2025/10/9
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著者について
明治25年(1892) – 昭和39年(1964)
和歌山県生まれ。中学時代から『明星』などに歌を投稿する。永井荷風を慕って慶應義塾に入学。『スバル』『三田文学』に寄せた詩で頭角を現す。大正8年(1919)『田園の憂鬱』を『中外』に発表し、作家としての地位を確立する。大正10年(1921)谷崎潤一郎夫人・千代子との恋愛のなかで『殉情詩集』を刊行し、『秋刀魚の歌』を執筆。艶美清朗な詩歌と倦怠・憂鬱を映す小説を軸に、随筆、童話、翻訳、評論など多彩な分野で活躍した。主な著作に『西班牙犬の家』『都会の憂鬱』『退屈読本』『車塵集』『晶子曼陀羅』など。