秋草の原(25)

秋草の原

【日本近代文学名作選㉕】

若山牧水

朗読 長尾奈奈

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若山牧水(明治18年 – 昭和3年)による随筆

「私の生れた家は、東と北とに山を負ひ、前に溪を控へた坪谷村字石原一番戸といふのだった。溪を距てた向側は、また巍峨たる險山となつてゐる。その部落と東隣の部落との間には、少しの間人家が斷えてゐて、和田越といふ小さな峠を越して来ると、まづ私の家が取っ着きとなり、そのまゝ疎らに溪に沿うて、西へ細長く、総戸数二十二戸ばかりの石原となるのだつた。西の方から白々と瀧のやうな長い瀬になって流れて来たその溪は、丁度私の家の眞下で、大きく彎曲して、そこだけ深い淵となってゐた。二階からはその大きな淵が一面に見下されて、月の夜など特に好かった。」ーー

著者:若山牧水
朗読:長尾奈奈
制作:声の書店
協力:株式会社 仕事
再生時間:00:07:35
販売開始日:2024/12/27 

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著者について

若山牧水

明治18年(1885) – 昭和3年(1928)

宮崎県生まれ。本名、繁(しげる)。早稲田大学英文科卒。在学中、学友とともに雑誌『北斗』を発行。 卒業後、処女歌集『海の声』を出版。明治43(1910)年、歌集『独り歌へる』『別離』を出版し、歌壇の地位を確立。翌年、詩歌雑誌『創作』を創刊する。旅や酒を愛し、歌のほか、紀行文、随筆など自然主義的な作を多く残した。『路上』『渓谷集』『くろ土』『山桜の歌』『みなかみ紀行』など。